BM98とBMSの今昔 (2) : BMSフォーマットの変化

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根本的なゲームシステムこそは変わっていませんが、本家1 の進化と共にBMSも時代に合わせて進化していきました。

目立った変化で言えばブロードバンド化やPCスペックの全体的な向上により回線速度や容量制限の制約がなくなり、全体的に音が高音質になりました。また、音色に関してもDAWやサンプリング、VST音源の普及によりかつてのMIDI音源ではなく本格的なシンセ、もしくは生音が使われるようになりました。そしてBMSフォーマットの拡張によりムービーも対応したことから、BGアニメーション(以下BGA)も紙芝居形式ではなく本格的なムービーが使われるようになりました。その分BMS作品の平均容量も上がりましたが、この辺りは時代の変化に伴うHDDの容量向上でカバーしています。

当時のBMSは使える音数が最大255音、BGアニメーション(以下、BGA)が最大254枚までと制約が厳しく、時代の変化によりこれらは拡張されていきました。現在はBM98に代わりLunatic Rave 2(以下LR2)というBMSプレイヤーが主流で、このプレイヤーで扱えるWAV数は1296音、アニメーションは1295枚まで使うことができます。

またアニメーションに関しては動画ファイルにも対応ししており、作業の大幅な軽減や演出の幅が広がりました。AfterEffectsをはじめとした動画制作ツールからのBGAの制作は一度BMPでの連番出力を行い、それをBMSエディタで組み立てるといった作業が必要で、その上BMP数の枚数制限もありましたが、ムービーを利用することにより制約が無くなり作業も軽減しました。

音声フォーマットはWAVのみ、画像フォーマットはBMPのみの対応でしたがこちらもOGG・MP32  の圧縮フォーマットに対応、画像フォーマットはソフトウェアによって違いますがPNG・JPGなどの圧縮フォーマットに対応しました。

変化を徒然と書いたところで一体どういった事が変わったかと長々と話しても実感は湧かないだろうと思うので百聞は一見にしかず。各時代のbms作品を見るとその変化がわかりやすいかもしれません。3

初期(1998年~2000年頃)

中期(2004~2006年頃)

後期(2009年~現在)
https://www.youtube.com/watch?v=eVBkmXwKyEI

これらはBMSプレイヤーの主流の変化に伴って使われるようになりました。LR2以外にも上記のような機能を搭載したプレイヤーはいくつか存在しておりましたが、当時のPCスペックではムービー再生や圧縮フォーマットの読み込み等に負荷がかかりすぎて正常に動作しないケースが多かったため、主流になることはありませんでした。LR2は主流になった年代はPCスペックも高くなっていったのと、インターネットランキング対応などの機能面で評判が良かった事から必然的にユーザーが移行する流れとなりました。この辺りに関しては別記事で気が向いたら書きます。

その他ゲームシステム面に関しても本家の進化(鍵盤数の増加)にあわせたり、当時本家には無かったオブジェクトが降っている間は鍵盤を押し続けるキー長押し4 や一定数以上のBPM変化5 、譜面の進行が一定数止まるギミックやオブジェクトを押したらミス扱いになる地雷ノートも搭載されました。BMSとは外れますが亜種としてDrummaniaやGuitarFreaksと同じ演奏パート数を持つGDAフォーマットや、pop’nmusicと同じ9つのボタンを使用するPMSフォーマットなども作られております。

鍵盤数が増えたこともあり、本家の難易度向上に追従する形でここ近年は作られるBMSの難易度も全体的に高くなっており、いわゆる普通と呼ばれる難易度の譜面は平均2分のBMS作品で大体700~1000個ものオブジェが降ってきます。昔は平均2分の作品でも「500オブジェ行って難しい方」だったので5鍵盤初期の本家を遊んだことがある人にとってこの難易度の上昇は驚くかも知れません。本家を触れていないユーザーにとってはあまりにも難易度が高すぎてついていけず、いわゆる「初心者お断り」の状況が続いているのが現在のBMS界隈における問題点の一つとなっています。

フォーマット自体は拡張されてはいますが、BM98で制定されたBMSフォーマットは今でもテキスト形式で書式は昔となんら変わっていません。現在はBMSEなどのBMSエディタで編集しやすくはなっておりますが、その気になればメモ帳でも編集は可能です。

しかしこのフォーマットの仕様はDAW環境の進化を背景に様々な音色が使えるようになり、豊富な音を出せるようになり、難易度上昇におけるオブジェ数が増えた結果WAV数が1296音使える現在でも既に限界が来ております。
ここ14年の間にも全く新しいフォーマットの提案がいくつかありましたが、どれも実用には至らず未だにBMSフォーマットが主流となっております。

今後新しいフォーマットと、そのフォーマットに対応したエディタが出てくればまた状況が変わってくるのかも知れません。
もっとも、今の主流であるLR2も既に4年前に開発が止まっている状況ですが。

  1. beatmaniaおよびbeatmaniaIIDXのこと。BMS界隈におけるbeatmaniaの通称。基本的にBEMANIシリーズのbeatmaniaは「本家」で統一します。   []
  2. ただしMP3はエンコードしたあとの頭に無音が追加される関係で使用を推奨されていません []
  3. BMSはかなり適当に選んでます []
  4. 通称ロングノートまたはチャージノート。正確に言えばキーボードマニアならびにEZ2DJを参考に搭載されたもの。 []
  5. BMSの仕様が拡張されるまでは255BPM以上に変更することができなかった。 []