Mid2BMSでBMSを作る

前回のMid2BMS話では解説らしい解説をまともに触れていませんでしたが、
今回の記事では実際に既存のMIDIからbmsを作っていきつつ解説を加えたいと思います。
とにかく時間をかけずに作りたいため、既存のMIDIから適当に拾って作りたいと思いましたが、さすがに他人が作ったMIDIを無断で使うのもいささか問題があるという事で、今回は今日のIRC廃人でお馴染みfether氏のサイト下部にある「やばいほど大昔のMIDI集」から本人がヤバいと自負していたtwinklestarのMIDIデータを元にBMSを作っていきます、勝手に。ほら「ご自由に」って書いてあるし。1

fether氏のtwinklestarを選んだ理由はとりあえず今回もblue modeで完結させたいのでコントローラ命令が全く使用されていないmidでかつbms化したら面白そうな物を選びました。

思いっきり長くなりそうなので「続きを読む」で。

続きを読む

  1. 一応完成後に本人に押しつけた後、許可は貰っています多分 []

mid2bmsがすごい

どれぐらい凄いかって今まで書いていた記事の続きがどうでもよくなるぐらいにはすごい。
……いやすいません、歴史に関してはいずれ書くので今はこのツールについて書かせてください。

bmsを作るにあたり一番面倒なのが音切り作業とその切った音の配置作業です。
bmsは曲を作って終わりというわけではなく、「キーを叩いたら鳴る音」を全部”音を切り”、キー音として抽出しなければなりません。
パート数やそのパート内で使う音が多ければ多いほど、抽出しなければならない音が増えていきます。
そして切った音はbmsに再び”配置”しなければなりません。また、配置ミスやWAV数の制限などの問題点も作業工程で発生します。
音が増えれば増えるほど作業時間が長くなり、この作業が原因でbmsから離れる人も少なくはありませんでした。

折角良い曲が作れたとしても譜面を作るまでの段階が面倒なら作る気が起こらない。
特に社会人やってる人なら尚更そう感じるのではないでしょうか。

そんな果てしなく面倒な作業の救世主となるであろうツールがここ最近になって登場しました。
それが今回紹介するmid2bmsです。

mid2BMS
http://mid2bms.web.fc2.com/

mid2bmsではbmsの音切りから配置までを面倒な工程を自動で出力してくれます。
作る曲にもよりますが、数日かかるものすごく面倒でこれだけで投げ出したくなるようなbmsの作業工程もこのツールにかかれば30分程度で配置が完了する優れものです。滅茶苦茶大げさですが実際に簡単にできてしまったので大袈裟です。

かつて7年ぐらい前にRe-Finalというbmsイベントでとある曲を出す予定でしたが、その曲で使用する音が(曲が出来た段階で)多すぎて、手動で音を切る段階ではてしなく面倒であり、このまま進めるとイベントに間に合わないという自己判断によりbms化を断念した曲がありました。それがこの曲です。

聴いてわかる通り、あまりにも音数が多すぎて、別の曲(この曲と比べるとそこまで複雑じゃない)をbms化した方が遙かにマシと思い、実際に別の曲をbms化してRe-Finalに出展した程度にはbms化には向いていないと思い、お蔵入りにしていました。

この曲がまさに今回のツールにうってつけだと思い、実際に使用してみることにしました。
作業の流れについては色々と書くと長くなるので省略します。とりあえず下記のURLを参考してください。(ブン投げ

Mid2BMSを使ってみた
http://mid2bms.web.fc2.com/tutorial.html

このチュートリアルにはblue、red、yellowに分けて、各mode別に音を切っていくのですが、
今回はblue modeのみでbmsが作れそうな感じがしたのでblue modeのみを使用する事にしました。
ちなみに使用するDAWはcakewalk SONAR 8.5です。X3持ってますけど8.5です。

で、できたのがこれ。

Night City -Shuffle style arrange- / TODOS arranged by AOiRO_Manbow (テスト版につきHYPERのみ同梱。15MBぐらい)

曲自体が7年前の代物で、テスト用のbmsである関係もあり、曲自体の完成度もアレだし音量バランスや譜面かなり適当なのはこの際許してください。

SONAR側でmid2bms用に調整が必要な部分がありましたが、このツールを使用した結果、数日程度かかるだろうと思っていた工程がなんと30分ぐらいで譜面無しのbmsデータができました。あまりの早さにびっくりしています。

制作工程の大雑把な流れは

  1. SONARのプロジェクトデータをmidで出力する
  2. 出力したmidを開き、空のパートを全て削除する
  3. mid2bmsの「mid2mml」で編集されたmidデータ( text3_tanon_smf_blue.mid) を出力する
  4. プロジェクトデータを開き、編集用のmidデータに置き換える
  5. 出力でパラアウトに設定後出力する
  6. text5_renamer_array.txtを開き、パラアウトしたデータのファイル名を各パートごとに合わせる
  7. WaveSplitterでwavを切って貰う
  8. 「text6_bms_blue.txt」を「text6_bms_blue.bms」にリネームして「renamed」フォルダに入れる
  9. 大 完 成 (※ ただしred modeとyellow modeで出力が必要なパートはここで終わらない)

と大体こんな感じです。

その後HYPER譜面の生成に2時間、細かい音の調整に大体2時間近くはかかっていますがこの曲を手動で作ろうと思ったら一週間以上はかかるような代物だったので恐ろしいほど制作時間の短縮に成功しています。びっくりです。

とりあえず使ってみた感想や所感を適当に書いてみます。

  • blue modeは基本ベロシティや音の長さが少しでも違うと別の1音と認識されるので、今回のようなベロシティ打ち込みが激しい曲に関してはある程度の妥協案が必要。1
  • 音の長さ関係なく音を出すドラムなんかは特に長さを統一しておかないと同じドラム音が大量に出力されるため、調整が必要になる。
  • mid2bmsで使用するmidを出力するときは必ずmidiフォーマット1で保存すること。フォーマット0だとエラー吐いて終わります。
  • SONARの場合だとパラアウトができるものの、あくまでもオーディオトラックの出力になるため、複数のパートが一つのoutに出力され、かつマルチアウトを持たない音源(というかTTS-1)は1パートごとに1音源にするなどして、mid2bms側での調整が必要。
  • SONARのパラアウト出力は当然busを経由しないため、busでリミッターを入れて出力する方法が基本通用しない。トラック個別でリミッタープラグインをかける必要がある。
  • ピッチベンドなどのCC命令は無視する模様。恐らくこれはred modeを使用することにより回避できるかもしれない。実はサックス部分にピッチベンドを適用していた箇所があったが、今回mid2bms側で出力されたデータはそれが出力されていなかった。
  • 和音は単音で出力されるため、例えば今回の曲のようなブラスが常に2音でハモり、ピアノバッキングに3音使うような音は譜面の配置に苦労するかも知れない。
  • mid2bmsで生成された作業データを残しておけば仮にミックスにミスがあったとしてもDAW側で該当パートを再度出力→再度切り直しの工程が簡単にできる。つまりミックスのやり直しが効きやすい。  2
  • でもちゃんと考えて曲を構成しないとWAV数が大変なことになる事が判明(今回の曲で722個)

これ以上徒然と書いてると長くなるので省略しますが、すくなくともmid2bmsは音切り作業がものすごい楽になるツールである事がわかりました。今回はあくまでSONARを例に挙げており、DAWの違いによる使い勝手の問題3 もありますが、このツール一本で譜面とミックス以外のbms周りの作業がほぼ完了するので、少なくともDAWをメインに使用しているユーザーは確実にこのツールが武器になるんじゃないかなと思います。特にかつてのコピーBMSのようなMIDI音源一本で済ませる楽曲に関してはこのツールが役に立つでしょう。4

また、音切りが面倒なのを理由のbmsを引退していた人等は一度このツールを使ってみてください。もしかするとbms作者の復帰を考える題材にはなり得るかも知れません。5

  1. 今回は面倒だったのとテストも兼ねてベタに変換しました []
  2.  ただしblue modeに限った話だけど []
  3. FL studioはツール側でサポート外の模様。 []
  4. DAWメインのご世代でそのような作者は少なくなりましたが。 []
  5. 自分がそうです。 []

BM98とBMSの今昔 (3) : BMS楽曲の変化 コピアレ編

昔のBMSはゲームやアニメなどのMIDI音源を演奏するコピーBMS、作者自身が作曲したオリジナルBMS、そして複数のアニメの音声を組み合わせて今で言うMADのような作品を作り上げるBMSAという同じBMS作品でも各方向性が違う作品が混在していましたが、今では需要の変化によりほぼオリジナルBMS一強という状況になっています。

ここ14年の間にBMS楽曲はどのように変わっていったかを徒然と書いてみます。
なんで14年近くも経っており明確な証拠も無く全て記憶が頼りで、その記憶もおぼろげで正確な記事じゃないかもしれませんがその辺りはご了承。
今回はコピーBMSの話から。

コピーBMSの定義は原曲から耳コピして打ち込んだmidiデータをMIDIシンセの音として出力し、それらを録音かつ音切りを行った上で制作されたBMSの事を指します。
コピーBMSは当時で言うとFFシリーズやDQシリーズと言ったゲームミュージック、ToHeartやKanonといった当時人気を博していたPCゲームの楽曲、そしてアニメソングやJ-POPの楽曲が実際に演奏できる形で配布されていました。
また、コピーBMSには亜種として自身もしくはMIDI作者が独自で編曲を加えたアレンジBMSも存在します。これらのBMSをまとめて「コピアレBMS」という名称で呼ぶことにします。

コピアレBMSの一例1

そのコピアレBMSのほとんどがMIDIサイトで配布されているmidデータを作者に許可を得た上で手持ちの音源で録音しBMS化というBMS作者自身がmidを作っていないいわば「借りMIDI形式」で作られる事が多かったのですが、2000年頃を境にある変化が起きました。

akiraaniの日記: JASRACがMIDI文化をつぶした論について歴史からひも解いてみる
http://slashdot.jp/journal/568446/URL長すぎてレイアウト崩壊したので省略

それはJASRACのネット配信の取り込みによる利用料金の徴収、後の「JASRACによるMIDI文化狩り」です。
JASRACが定める信託曲MIDI配布の制定内容はダウンロードできる楽曲が最大10曲までで価格が年1万円。今思うと金額としてはそこまで高くはないのですが、アニメやJ-POPを主軸に扱っていたmidiサイトは10曲以上取り扱っているサイトが多く、明確な金額で支払えないと判断したサイト運営者が次々とJASRAC管理楽曲のmidiを公開停止またはサイト自体を閉鎖していきました。支払いを無視しmidiサイトを運営していたサイトはJASRACから警告のメールが送られる事案もあり、JASRACが本格的に動いていたことから他のmidiサイトもダウンロードの自粛や各ポータルサイトがオリジナル以外は扱わなくなる等、結果としてMIDI文化が萎縮する流れとなりました。

BMSとは直接的な関連性は無いものの、「借りMIDI文化」にとってこの萎縮は楽曲の選択が狭まる形となり当時は大打撃でした。

とはいえコピアレBMS自体は元々JASRACに信託していないゲームミュージックのBMS作品が多く、実際にJASRAC問い合わせをした人が回答を見事にスルーされるなどの流れによりコピーBMS自体にはそこまで影響が無かったのですが、MIDI文化の衰退に加えてブロードバンド化に伴う回線やホームページ容量の増加が後押しする形でコピアレBMSも衰退しはじめました。

そもそもMIDIは容量が軽い反面、「専用のMIDIハードウェアが無いと意図した形で再現できない」という再生環境に強く依存するファイルであっったため、ユーザーの環境によっては正常に再生されないケースがほとんどでした。そのハードウェアも良質なものは4~5万円と高価で、一般ユーザーが持っている方が珍しい時代でした。
そういった制約が無いオーディオ形式はmp3でもmidiファイルの数十倍以上の容量を要し、当時のホームページ容量の平均が10MB前後であったこと、また当時の回線もISDNが主流で測度にして平均7KB/sしか出ないような環境がほとんどだったため、たとえユーザーが自信の再生環境を持っていなかったとしてもmidiファイルを選ばざるを得ない状況でした。

しかしこれらはホームページの容量やインターネットのブロードバンド化に伴ってmidファイルではなくmp3形式で配布するサイトが増え始めました。
mp3はmidiと違いシーケンサデータではなくオーディオデータですので当然譜面データは抜き出せませんし、パート別に分けることも、それらの音を切ることもできません。パラアウトデータ2 を作者にお願いするのも無茶な話です。MIDIを扱うサイトの減少は「借りMIDI形式」によるコピアレBMSも追いかける形で減っていきました。

また、主軸となっていたコピアレBMS作者が社会人になり作る余裕が無くなってしまったのも含めて結果として2003~2005年頃を境に作者が次々と減る形となりました。この辺りはかつて運営されていたコピー・アレンジBMS専門レビューサイト「Re-Rise」とその後に運営していたコピアレBMS登録サイト「Re-3」の閉鎖も背景にあったのかもしれません。あとこの時期にはタイミング的に別の理由3 もあった気がしますが割愛しておきます。

2014年現在はコピーBMSを作る人はほぼいなくなり、代わりにアレンジBMSが主体になっていきました。かつてのRPGやPCゲームの曲を原曲に使用されたBMSが作られることはほぼ無くなり、代わりに東方ProjectのアレンジBMSが大多数を占めている状況です。

ただこれでも昔と比べると専門とする作者が大分減っており、前途で触れたゲームミュージック、アニメ、J-POP等のコピアレBMSは今だと作ってる方が珍しいんじゃないでしょうか。

ちなみに、J-POPやアニメソングなどの音源を耳コピなどを一際せずそのままリッピングなどで抜き取り、WAVとしてバックミュージックに配置した後、押しても鳴らない無音のキー音を配置したBMSはコピーBMSではなくキー音無しBMS、通称「物故抜きBMS」 として扱われています。キー音無しBMSはCDから抜き取った音源をそのままアップロードするため違法性が高く、なにより本家とBMSにある「キーを叩くと音が鳴る」という根本的なゲームシステムを冒涜するような粗悪な作品だったため昔から忌み嫌われていました4

その後どうなったかというと前途のJASRACの件により配布サイトが一斉に消滅。そのタイミングでDDRのクローンゲームであるstepmaniaがブーム5 になって、そちらの方へ需要が移り6 見かけることすらあまりありませんでしたが、2007年にはニコニコ動画で「組曲『ニコニコ動画』」のキー音無しBMSをきっかけに再び需要が上がったようです。

ニコニコ動画内でのキー音BMSは当時だとニコニコ動画内で流行っていた音源(「魔理沙は大変なものを盗んで行きました」をはじめとした東方Projectアレンジ、VOCALOID、アニメソングなど)を中心に投稿されていました。当時の投稿率の多さに本来のキー音有りのBMSの動画が埋もれる事態が発生したため、昔のキー音無しBMSを知るプレイヤーとってあまり良い印象を受けることはなかったようです。現在でも投稿作品をちらほらみかけますが、当時と比べると傾向が変わっており「他の音楽ゲームの楽曲を本家(IIDX)に移植したらどうなるか」といういわゆるもしも系の作品が主流となっています。

このようにキー音無しBMSは「BMS作品を配布するという名目で違法音源をバラまく」と「ゲームシステムを冒涜している」という背景があった関係でBMS作品を発表するイベントでは現在もなお規約として基本的に禁止しており、またLunatic Rave 2ではこういった違法な音源を利用したキー音無しBMSの演奏を禁止しています7

なぜ当時のプレイヤーや作者が過度なまでにキー音無しBMSを忌み嫌うのかについてはその昔BM98が様々な事情によりいわゆるアンダーグラウンドのコンテンツとして扱われていた時期が存在していた関係もあったわけですが、コピアレBMSの話題から完全に外れてるので、この辺りは気が向いたら書きます。

そんなキー音無しBMSに近い手法がまさか本家8 で採用されるとは夢にも思っていませんでしたが。

コピアレBMS記事だけで無駄に長くなってしまったので気が向いたらまた今度。

  1. 適当にYoutubeで漁ろうと思ったら自分が知ってるコピアレBMSが全く無くてびっくりした []
  2. 各パート単体のみが再生されたオーディオデータ群。パートの数だけオーディオデータが出力されるため当然ながらミックスで出力するよりも容量が数十倍に倍増する。 []
  3. 2003年頃にラグナロクオンラインのベータ版が運営開始。当時は圧倒的な人気を誇り「ネトゲ廃人」という言葉を産みだしたほど。当時のコピアレBMS作者はRPG好きが多く、ROに行ったまま戻ってこなかった作者もいたとかなんとか(虚構です)。  []
  4. 実際、初期のBMS登録サイトにはアニメソングやJ-POPなどといった作品は大抵キー音無しBMSだった。中にはBMSを配布するという名目でJ-POPのMP3を配布していたサイトがあったとかなんとか []
  5. DDR foonmixのリリースを皮切りに国内でstepmaniaがブームに。当時は様々なstepmania用のパッケージが配布された。 []
  6. stepmaniaは譜面エディタが内蔵されており、BMSエディタより作りやすかったため需要が移り変わった。また、元となったDDRはダンスゲームであり踏んでも音が鳴らない関係でキー音を用意する必要が無い。 []
  7. 実際にはシステム面で弾くような仕様は搭載しておらず、付属のテキストこのような文章が規約として掲載している。また、使用するWAVが1分を超えた場合LR2のインターネットランキングにスコアを登録することができない。 []
  8. Pop’n music sunny park の版権曲。楽曲に原曲をそのまま使用した代償としてボタンを叩いても音が鳴らなくなった。元々ポップンも「ボタンを叩いて音を鳴らす」ゲームであったため、その方針を覆すような楽曲の収録は色々と話題になった。現在もなおこれらの楽曲が収録された真意は判明していない。 []

BM98とBMSの今昔 (2) : BMSフォーマットの変化

根本的なゲームシステムこそは変わっていませんが、本家1 の進化と共にBMSも時代に合わせて進化していきました。

目立った変化で言えばブロードバンド化やPCスペックの全体的な向上により回線速度や容量制限の制約がなくなり、全体的に音が高音質になりました。また、音色に関してもDAWやサンプリング、VST音源の普及によりかつてのMIDI音源ではなく本格的なシンセ、もしくは生音が使われるようになりました。そしてBMSフォーマットの拡張によりムービーも対応したことから、BGアニメーション(以下BGA)も紙芝居形式ではなく本格的なムービーが使われるようになりました。その分BMS作品の平均容量も上がりましたが、この辺りは時代の変化に伴うHDDの容量向上でカバーしています。

当時のBMSは使える音数が最大255音、BGアニメーション(以下、BGA)が最大254枚までと制約が厳しく、時代の変化によりこれらは拡張されていきました。現在はBM98に代わりLunatic Rave 2(以下LR2)というBMSプレイヤーが主流で、このプレイヤーで扱えるWAV数は1296音、アニメーションは1295枚まで使うことができます。

またアニメーションに関しては動画ファイルにも対応ししており、作業の大幅な軽減や演出の幅が広がりました。AfterEffectsをはじめとした動画制作ツールからのBGAの制作は一度BMPでの連番出力を行い、それをBMSエディタで組み立てるといった作業が必要で、その上BMP数の枚数制限もありましたが、ムービーを利用することにより制約が無くなり作業も軽減しました。

音声フォーマットはWAVのみ、画像フォーマットはBMPのみの対応でしたがこちらもOGG・MP32  の圧縮フォーマットに対応、画像フォーマットはソフトウェアによって違いますがPNG・JPGなどの圧縮フォーマットに対応しました。

変化を徒然と書いたところで一体どういった事が変わったかと長々と話しても実感は湧かないだろうと思うので百聞は一見にしかず。各時代のbms作品を見るとその変化がわかりやすいかもしれません。3

初期(1998年~2000年頃)

中期(2004~2006年頃)

後期(2009年~現在)
https://www.youtube.com/watch?v=eVBkmXwKyEI

これらはBMSプレイヤーの主流の変化に伴って使われるようになりました。LR2以外にも上記のような機能を搭載したプレイヤーはいくつか存在しておりましたが、当時のPCスペックではムービー再生や圧縮フォーマットの読み込み等に負荷がかかりすぎて正常に動作しないケースが多かったため、主流になることはありませんでした。LR2は主流になった年代はPCスペックも高くなっていったのと、インターネットランキング対応などの機能面で評判が良かった事から必然的にユーザーが移行する流れとなりました。この辺りに関しては別記事で気が向いたら書きます。

その他ゲームシステム面に関しても本家の進化(鍵盤数の増加)にあわせたり、当時本家には無かったオブジェクトが降っている間は鍵盤を押し続けるキー長押し4 や一定数以上のBPM変化5 、譜面の進行が一定数止まるギミックやオブジェクトを押したらミス扱いになる地雷ノートも搭載されました。BMSとは外れますが亜種としてDrummaniaやGuitarFreaksと同じ演奏パート数を持つGDAフォーマットや、pop’nmusicと同じ9つのボタンを使用するPMSフォーマットなども作られております。

鍵盤数が増えたこともあり、本家の難易度向上に追従する形でここ近年は作られるBMSの難易度も全体的に高くなっており、いわゆる普通と呼ばれる難易度の譜面は平均2分のBMS作品で大体700~1000個ものオブジェが降ってきます。昔は平均2分の作品でも「500オブジェ行って難しい方」だったので5鍵盤初期の本家を遊んだことがある人にとってこの難易度の上昇は驚くかも知れません。本家を触れていないユーザーにとってはあまりにも難易度が高すぎてついていけず、いわゆる「初心者お断り」の状況が続いているのが現在のBMS界隈における問題点の一つとなっています。

フォーマット自体は拡張されてはいますが、BM98で制定されたBMSフォーマットは今でもテキスト形式で書式は昔となんら変わっていません。現在はBMSEなどのBMSエディタで編集しやすくはなっておりますが、その気になればメモ帳でも編集は可能です。

しかしこのフォーマットの仕様はDAW環境の進化を背景に様々な音色が使えるようになり、豊富な音を出せるようになり、難易度上昇におけるオブジェ数が増えた結果WAV数が1296音使える現在でも既に限界が来ております。
ここ14年の間にも全く新しいフォーマットの提案がいくつかありましたが、どれも実用には至らず未だにBMSフォーマットが主流となっております。

今後新しいフォーマットと、そのフォーマットに対応したエディタが出てくればまた状況が変わってくるのかも知れません。
もっとも、今の主流であるLR2も既に4年前に開発が止まっている状況ですが。

  1. beatmaniaおよびbeatmaniaIIDXのこと。BMS界隈におけるbeatmaniaの通称。基本的にBEMANIシリーズのbeatmaniaは「本家」で統一します。   []
  2. ただしMP3はエンコードしたあとの頭に無音が追加される関係で使用を推奨されていません []
  3. BMSはかなり適当に選んでます []
  4. 通称ロングノートまたはチャージノート。正確に言えばキーボードマニアならびにEZ2DJを参考に搭載されたもの。 []
  5. BMSの仕様が拡張されるまでは255BPM以上に変更することができなかった。 []

BM98とBMSの今昔 (1)

電王戦,なんで勝てたんですか?――「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」第15回は,「BM98」を開発した伝説的なプログラマー・やねうらお氏がゲスト
http://www.4gamer.net/games/001/G000183/20131222001/

ここ最近電王戦の記事をきっかけに「BM98懐かしいなー的」な話題をよく見かけます。かつての音ゲー大ブームに便乗するような形で有名になったフリーソフトなので音ゲー大ブームを経験し、当時PCやインターネットをやってた人達にとっては知ってる人は多いんじゃないでしょうか。そもそも上記記事のインタビューでドワンゴの川上氏から「BM98」という言葉が出る時点で当時の影響力は凄かったんだなあと思った次第。やねうらお氏もびっくりですが恐らくBM98を深く知ってる人達もびっくりだと思います。自分もです。

嗚呼、インターネット黎明期。君はあの頃を知っているか。
http://wp-e.org/2014/04/03/1704/

BM98やったことあるやつ思い出でも語ろうぜwwww – MC)まとめこむ
http://mc.matome-complate.com/archives/4106311.html

その話題をされる度に「あったなー」とか「懐かしいなー」とか言われてて明らかに過去の遺産扱いしてる人をちらほらみかけますが、BM98が当時取り扱っていた楽曲データのフォーマットであるBMSを取り巻く界隈(今で言うクラスタ1)は今でも現役です。

もう14年ぐらい経ってて昔ほど目立っていないしBM98自体も実質開発終了している状況ですが、プレイヤーやBMS作者、BMS関連のサイトが変わりつつも今でも根強い人気があるコンテンツです。

もっとも、この背景にはBMSの元となっているbeatmania(BEMANIシリーズ)の7鍵盤バージョンであるbeatmaniaIIDXが現役で稼働している背景も後押ししているのですが、beatmaniaが稼働当時の爆発的な人気をきっかけに音楽ゲームを知り、そのゲームを追いかけなくなった人達にとってはbeatmaniaもBMSも「まだあったんだ」程度に思われるかもしれません。でも「まだある」んです。

そりゃあ14年も経っていますもの、既に終わったコンテンツだと思っていた方も多いかも知れません。自分も「2000年代ぐらいには終わるだろうなあ」とか思っていたら今でも現役どころか、ブロードバンド化やDAWの普及やPCスペックの向上もあって昔と比べると作者が一気に増えている状況です。

そんな「まだあったんだ」と思っていた人向けにBMSの今昔について色々と書こうかなと思っています。
不定期更新で気が向いたら書く程度のノリで。

ちなみに私、AOiRO_Manbowと申します。かつて「青色マンボウ」だった人です。
初めましての方は初めまして、かつてのBM98時代に名前を覚えてくれてた方はお久しぶりです。
当時は趣味満載のBMS総合サイトをやっていた者です。

一部の方々にとってはもう引退している老兵で、今生きているかどうか不明な扱いになられがちですが誠に残念ながらBMSイベントの運営管理者として今でもしぶとくBMS界隈に老害として生存しております。当時ほどBMSを掻き集められるような時間も余裕も無い状況ですが一応この界隈を追いかけています。
ついでに言うと別名義でニコニコ動画辺りでも活動しておりますがその辺りは語っても仕方ないので割愛します。

なお、今後記事を書くにあたり「BM98用の楽曲データ」という呼び名は基本BMSで統一させていただきます。
というかBMSデータの事をひっくるめて「BM98」と呼んでいる人はアラサーかそれ以上の年齢の疑惑をかけられるので、まだその年齢辺りに到達していない人もしくは年齢を知られたくない人は要注意ですよ。

  1. clusterで意味は「沢山の数の集まり」。一応書いておきますがclub Stubbornじゃないすよ。 []